COVER STORY

一目惚れした帯の工房へ。

『美しいものをつくる人たちを訪ねて』きもの編


 

 

そろそろ着物でおしゃれを楽しんでみたい。

そう思い始めていたとき、たまたま先に草履を買ってしまいました。

なので、次はやっぱり着物、それも紬などの普段着をと思い、

呉服屋さんののれんをくぐりました。

いろいろ勧めていただいた中で心惹かれたのが

藍色の結城紬とそれに合わせた可愛い帯でした。

うん、こんな感じが好きかもと気になって、

だけどその日はちょっと怖気づいて帰宅。

しばらくしてから、やはりあの感じがいいな、

あの一揃いを買おうと呉服屋さんにでかけると。

紬はもうありませんでしたが

可愛い帯は私を待ってくれていたのです。

 

マルニみたいな帯。

 

そう、私のお気に入りのイタリアンブランド、

マルニっぽいテイストで、すごく可愛いくて・・・。

こんな帯だったら、着物初心者の私でも

洋服の感覚で着られそう、そう思いました。

 

 

やがて着物と帯が仕立て上がり、はじめてその帯を締めたときの写真を

友人がインスタグラムに上げました。

すると、友人とつながっていた京都の帯屋さんが

「うちでつくった帯です」と名乗り出てくれたのです。

 

これをご縁というのでしょうね。

 

早速、つくった人に会いに京都まで出かけることにしました。

 

京都西陣。

北野天満宮の近くに、その帯屋さんはありました。

 

玄関には佳帛と書かれた表札が、

そして内玄関にも佳帛の文字の入った扁額が掲げられています。

佳帛とは「佳(よい)」「帛(絹の布)」のこと。

より佳い帯をつくり、つくる側・売る側・買う側の三者が

安心と喜びを平等に分かち合えることを願い

第225世天台座主の方に揮毫をお願いしたそうです。

 

「佳帛」

私が一目惚れしたのはまさしくそんな帯でした。

 

 

黒田

今日はお邪魔させていただき、ありがとうございます。

お気に入りの帯です。締めて来ました。

 

藤田

ありがとうございます。本当に嬉しいです。

それにしても、どうしてこの帯が目に留まったのですか?

 

黒田

呉服屋さんで、無地の紬にいろいろ帯を合わせていたときに

あ、これ好きだな、こんな合わせ方いいな、と思いました。

着物のことはよくわからないけれど、

色とか、ちょっとざっくりした感じとか、

なんだか立体感があって可愛いなって。

 

藤田

そう気づいていただけるのが、いちばんありがたいです。

立体形状がウチの特徴なんですね。

高さがある帯とでもいいましょうか。

点と線と面をいろいろに組み合わせて、作っています。

 

黒田

点と線と面ですか!

たしかに、他の帯とはずいぶん印象が違っていて

こういうモダンな帯もあるんだって思いました。

 

 

藤田

15年くらい前からでしょうか。

よくある既存の帯は面白くないと思っていました。

みんな写真みたいな絵柄のきれいな帯を作るのに躍起になっていて。

僕としては、そういう平面的なものより

点と線と面にこだわることで

もっと奥行きのある帯を作りたいなと思っていたんです。

 

黒田

奥行きのある帯ですか。確かにこの帯、

お太鼓にある花のような糸の表情が

ひとつ一つ違っていて、独特の陰影があって、

それがこの帯の個性になっている。

実際に織るのもご主人がなさっているのですか?

 

藤田

どんな帯にするかのアイデアがまずあって、

それを具体的に表現するためのプロデュースをして。

自分で95%くらいは完成形が見えているんですが、

織るのだけは織人さんにお願いしています。

 

 

黒田

なんだか映画監督みたいですね。

 

藤田

そうですか。全体構想がないと、素材には向かえませんからね。

自分の頭の中にあるイメージを織人さんに完成させてもらう感じですね。

そのかわり自分で織らないぶん、織っている音には敏感になります。

機織りの音で、織人さんのコンディションもわかります。

 

黒田

えっ、音を聞いただけで?

 

藤田

今あのへんを織っているなとか、

あれ、今日ちょっと調子悪いな、

みたいなことも音聞いてるだけでわかります。

人の手で作っていますから、いつも均一にできるとは限らない。

 

黒田

それが帯の個性につながっているんですね。

糸の表情もとても面白いですね。

 

 

 

藤田

どういう糸にするかというのが実はいちばん大事やと思っています。

糸は100種類以上ありまして、

どう組み合わせるかで表情が変わるので、

アタマの中につくりたい帯のイメージが浮かんだら、

まずどんな糸にするかを考えます。色やかたちも含めて。

 

黒田

糸もこちらで染めているのですか?

 

藤田

はい、僕が染めています。

帯のイメージにぴったり合う色を作りたいと思うので。

好きな帯を作るには好きな色を作るのがまず大事で、

その次はどう染めるかを考えます。

普通の染屋さんだったらわた全体に色を染み込ませるんですが、

僕はわたの表面だけ染めたり、糸の脂をぬいて染めたり・・・

手作業で手加減すると面白いことがいっぱいできます。

 

 

黒田

帯にちょんちょんっと出ている糸の太さが微妙に違ったり

色にグラデーションが付いてたりするのは

そういう作業をしているからなんですね。

普通はそんなことしないんですか?

 

藤田

やはり同じ品質をきちんと作ることが一般的ですから、

そんな効率の悪いことプロの染屋さんはまずしないでしょうね。

でも、染め方ひとつとってもいろいろチャレンジしないと

面白いことできないので、僕はあえてやっています。

 

黒田

着物はまったくの初心者なんですが、

なんとなく今まで見ていた帯とは明らかに違うなと思いました。

 

 

藤田

黒田さんのその帯は「芽ばえ」というシリーズで

よく似た兄弟や親戚みたいな帯はありますが、

まったく同じものはないんです。

人の手で作っているので、糸の表情も色も表し方も少しずつ違う。

もっと言えば、そのときの織人さんの気持ちや調子、

僕の指示だって毎回同じようにはできません。

だけど、それが帯の個性につながっているんです。

 

黒田

世界に一着しかない私の「芽ばえ」なんですね。

それって、とても嬉しい(笑)

それに、この帯とても締めやすい。

きゅっと身体になじむ感じがします。

 

藤田

お客さまに締めやすいと言っていただけるのが

作り手としては、いちばん嬉しいですね。

 

 

黒田

たぶん、これからの着物人生の中で

この帯は記念すべき第一号として

ずっと活躍してくれると思います。

ありがとうございました。

 

 

藤田織物のご主人藤田さん、奥様と三人で。着付けを教えていらっしゃる奥様に、当日の着付けも手伝っていただきました。

◎写真/中村泰

 

◎今日のコーディネイト

初めて自分で選んだ普段着の着物と帯です。帯は、藤田織物さん作の「芽ばえ」。着物は藍の綿薩摩。モダンな地柄が気に入って購入しました。「え、初めて買ったのが綿薩摩?」と驚かれるのですが、私としては何も知らないので、これは素敵!と思ったものを買っただけなのです(笑)。着物のこと、これからいろいろと勉強しつつ、楽しんでいけたらいいなと思っています。帯締めも同系色で、大好きなワントーンコーディネイトでまとめてみました。、帯揚げには白を効かせて。

 

 

◎藤田織物株式会社

革新的なクリエイティブを伝統技術で創造する。美しい日本の伝統文化を守り、未来へと発展せていくための帯作りを行っている京都・西陣の織元。光が当たることで柄や濃淡の変化を楽しめる立体形状の帯が特徴で、熟練の織人が手作業でひとつひとつ織っています。ギャラリーでは帯を展示しており、実際に帯を織っている工房の見学もできます。(完全予約制)

 

 

京都市上京区下長者町通御前通西入川瀬町584番地19

(北野天満宮から南へ徒歩10分)

ギャラリーは完全予約制となっております。

お電話、またはメールにて

1.お名前 2.ご住所 3.お電話番号 4.ご来店予定日時 5.ご来店人数

075-461-0800(担当:藤田)

mail:info@fujitaorimono.co.jp

http://www.fujitaorimono.co.jp