COVER STORY

築城則子さんと。

『美しいものをつくる人たちを訪ねて』きもの編(後編)


 

究極の裂に出会い小倉織を再現された築城則子さん。

築城さんの帯に出会い、着物道を少しだけ深めた私。

ちょうど出版されたばかりのCHICO MY FAVORITE 2の

着物のページに、築城則子さんの帯をコーディネイトした

写真があることを思い出し、お見せしました。

 

さて、対談後半です。

 

 

築城

あら、可愛い。この着物と帯の合わせ方いいですね。最近、同系色でまとめてしまう方が多いけど、帯揚げと帯締を違う色で合わせているのは素敵ですよ。

黒田

この着物、綿薩摩ですべらないから着やすいです。先生の帯もそうですよね。きゅっと締まって、結びやすくて、気持ちがよい。で、どんな着物と組み合わせても合うんです。

築城

わあ、こんなふうに載せていただいてうれしいです。黒田さんにお求めいただいたこの帯は縞の色は違うけど縞を規則的に繰り返す柄なので、同じ縞の中でも格が出せるんですね。

黒田

縞ってちょっと粋になりすぎることもあるけれど、築城先生の帯はそういう感じじゃなくって、どこかしら柔らかい印象です。

築城

昔から縞イコール粋って言われますね。本当の意味で粋だとうれしいんですが、今、粋と粋筋がごっちゃになっているでしょう。それはちょっと違うような気がしていて。そこに品格のようなものがないと情感は生まれないような気がするので・・・作るときにはそんなことも考えます。

黒田

私のこの帯はどういうもので染めた色なんでしょう。

築城

藍色の系統は藍ですね。緑は藍に黄色をかけていますね。この黄色はたしか楊梅(ヤマモモ) 。茶は柘榴の果皮で染めています。このグレーは金木犀ですね。

黒田

素敵。そういうのお聞きすると、いっそうこの帯への愛着が湧いてきます。金木犀がこんなグレーになるんですね。私、小さいとき、金木犀の香りが大好きで、いっぱい採ってきてお水につけたら香水ができると思って。そうしたら次の日、すごく嫌な香りがして・・・馬鹿ですね・・・笑。

築城

化学染料で出すグレーと違って、草木から出る色には硬さがないんですね。日本は四十八茶百鼠というように、粋で洗練された色彩文化があったんですよね。それはやはりすべて自然が持つ豊かな色なんですね。この帯は、いろんな色の縞でぱきぱきしているから、こんどは同系色のグラデーションの帯にチャレンジしていただけるといいですね。たまたまいくつか作品があるので、お見せしましょうね。

 

 

黒田

わあ~このピンクやブラウンの縞、素敵ですね。

築城

ピンクは梅や桜で花の咲く前の枝で染めました。この茶色は老木の桜の樹皮で染めた・・・女の一生って感じの(笑)グラデーションです。

黒田

このちょっと端っこがぼよんとにじんでいるのがいいです。すごいなあ。

築城

樹木って外から見たら緑の葉っぱと茶色の枝しか見えていないのに、まったく違う色が出てくるんですから、植物の力ってすごいですよ。

黒田

この黄色のグラデーションもいいですね。

築城

玉ねぎですね。

黒田

玉ねぎって、食べると身体にもいいし、美味しいし、染めるとこんなきれいな色までだしてくれるんですね。役に立ってますねえ(笑)。

築城

植物が表現してくれる多彩な色に感謝ですね。

黒田

これからのビジョンというか、チャレンジしていきたい表現はあるのですか。

築城

縞って、空間があってそこに縞があるでしょ。そうではなくて、縞自体を地色とか空間とか考えずに、面という中で縞ができないかというのに挑戦しています。面で縞を表現すると重くなるんじゃないかという怖さもあったんだけど、それを今展開したいなと思っています。

 

 

黒田

凄い、縞が面になっている~

築城

まだまだこのままじゃ納得していなくって、これをどう展開していくかがこれからの課題ですね。同系色だけでひとつの面をつくるっていうのは、今まではなかったものです。

黒田

縞が面になったとしても、やはり先生のいちばん大事な作業はタテの世界の構築でしょう。

築城

そうですね。自分自身の表現として経の世界を選んでいるから、整経のところだけは妥協せずとことん突き詰めます。「縦は理知で、横は感情」という言い方があるんです。それは、緯糸は織りながら変えていけるんですよ、つまり感情で変化させられる。だけど、経糸は織る前にこれで行くと決めないと駄目なんです。経糸の準備の段階で決心が揺らぐといつまでたっても用意ができない。

 

 

黒田

織り始めてから、あれっ、やっぱり違うかななんて思われることはないのですか。

築城

やはり整経のところですべて決まる作業なので。揺らぎはしないけど、次回のためのアドバイスを糸からもらうということはあるんですよ。だけど、織り機の上でいくら考えても駄目です。全部織り上がって、機から切り離して、向かい合ったときに、初めて本当の答えが来るんで、だけど、いろいろ後で思うこともありますけれど、それは次回のテーマになるように考えます。

黒田

先生、男前ですね。お気持ちも、小倉織と一緒で、本当にきっぱりとされている。

築城

途中で考えないようにしているというだけなんですけどね。

黒田

その姿勢や考え方そのものも含めて築城先生の世界なんですね。本当に今日はお会いして、素敵なお話も伺えて、ますます帯が愛着あるものになりました。

築城

自分の故郷にこんなに素晴らしい織があって、何とかそこに近づこうと追及してきて、本当にたまたま昔の織を再現することができて。しかも、それが自分自身が好きな経糸の世界であったこと。すべて幸せなことですよね。

九鬼周造いわく「永遠に動きつつ永遠に交わらない平行線」。その縞という制約のなかで、どう自分の表現をしていくか。まだまだ縞を追い求めますよ。

 

 

 

二極をなして同居するものに惹かれるとおっしゃる築城則子さんの

経糸と緯糸が織りなす揺るぎのない世界。

緯糸が経糸にのみ込まれてしまうほどの密度のある縞は

自然の豊かな色をもらって無限に広がって行く。

 

制約の中にある、限りのない自由。

どこまでも深く、豊かで、勁いのに、柔らかい。

 

帯合わせの不思議へと私を誘ってくれた帯の作り手が

またひとつ深いところへ私を連れていってくれたような気がします。

 

きっぱり潔い縞の帯。

 

こんどは、どんな着物と合わせようか。

考えるだけで、ドキドキしてきます。

 

◎写真/中村泰

◎今日のコーディネイト

新緑が気持ちよい季節になってきました。今日の出で立ちは、コム・デ・ギャルソンのニットカーディガンに、セリーヌのパンツ。薄手のカーディガンをプルオーバーのように一枚で着ると、この季節ちょうど良くて気に入っています。パンツはフォータックでヒップまわりにきれいなボリュームが出るので、こちらもけっこう活躍しています。パンツの裾を折り返すと白い裏地がポイントになるようデザインされていて、軽さが加わります。

 

◎築城則子 染織家◎

1952年 北九州市生まれ

1974年 早稲田大学文学部中退、染織を志して久米島、

    信州などで紬織について学ぶ

1984年 小倉織復元、1994年 小倉縮復元

1995年 遊生染織工房設立

2005年 第25回伝統文化ポーラ賞 優秀賞 受賞

2007年 文化庁芸術家海外派遣制度の特別派遣として80日間ロンドンにて研修

2016年 ミラノデザインウィーク「Parabolic Stripes」出展

日本伝統工芸染織展で文化庁長官賞(2008年)など工芸展での受賞多数

銀座・和光ホール他での個展開催も多数

東京国立近代美術館、Victoria and Albert Museum(ロンドン)、

北九州市立美術館に作品収蔵

日本工芸会正会員

 

◎遊生(ゆう)染織工房◎

〒805-0037

福岡県北九州市八幡東区猪倉町5-8

Tel & Fax 093-651-4517

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※詳しくはホームページをご覧ください。

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