◎満天星一休の栗きんとん
栗きんとん。
秋がやって来ると、恋しくなるお菓子。
香ばしいほうじ茶といただくと
ふんわり幸せな気持ちになります。
栗とお砂糖だけで丁寧につくった
やさしくて、どこか懐かしい味。
きゅっと茶巾で絞ったかたちも可愛い。
珈琲と一緒にいただくのも好きなんです。
中津川は、栗きんとん発祥の地。
秋になると一斉に栗きんとんが販売されるのだそうです。
きんとん好きとしては、これはもう行かずにはいられないでしょう。
さっそく、名古屋から特急ワイドビューしなのに乗って向かいました。
先頭車両のいちばん前の席に座れば、車窓の風景を独り占めできるんです。
秋の信濃路、紅葉にはまだ少し早かったのですが、
平行する土岐川を眺めながら、深まって行く渓谷の景色を楽しみました。
多治見を過ぎると次に停車するのが中津川。あっという間の50分です。
駅前にある中津川観光センター「にぎわい特産館」にお邪魔しました。こちらでは、毎年9月1日から12月14日までの期間、中津川の栗きんとんのお店15店舗とタイアップして、「中津川栗きんとんめぐり」を販売しています。いろんなお店の栗きんとんを楽しんでいただけるよう、7店舗の栗きんとんを1個ずつ7個詰め合わせた限定商品(2種類あります)で、ここでしか買えません。お好きなお店の栗きんとんを1個から購入できるので、この特産館の中でいろいろ試せるというわけ。気になるお店があれば、実際に訪ねることもできます。
中津川は昔から交通の要衝として知られ、江戸時代には中山道46番目、東濃随一の宿場として栄えました。もともと独自の文化を持っていたところに、京や江戸の文化が入りこんで、中津川の豪商たちによって俳句や茶の湯が発達。茶の湯の席で粋人たちを満足させるため、和菓子職人たちは切磋琢磨し合い、そうした背景の中で中津川の山の恵みを生かした栗きんとんが生まれたのだそうです。駅前のロータリーには「栗きんとん発祥の地」も建っていました。
まずは、駅から歩いてすぐのところにある『梅園』さんにお邪魔しました。こちらの栗きんとんは、手作業で栗を掘り出すため、栗の粒がしっかり感じられる食感。栗きんとん1個作るのに栗を5個も使うそうです。栗きんとん以外で目につくのは、栗きんとんを作るとき鍋底につくおこげを焼いた焼栗きんとん、大きな栗が二つ入った栗まんじゅう・めおと栗など、どれも美味しそうなお菓子ばかり。つい、あれこれと手が伸びそうになるのでした・笑。
◎御菓子司 梅園◎
中津川市太田町2-3-8 0573-65-2543
営業時間 8時30分~19時(木曜日は18時まで)
年中無休
栗きんとん 1個237円(税込)
次にお邪魔したのは、すぐご近所にある『川上屋』さんの駅前店。中津川宿の時代からお菓子作りを研鑽して来た歴史ある老舗だそうです。こちらの栗きんとんは、上品でなめらかな食感。さっきいただいた『梅園』さんの栗きんとんとはまったく食感が違っていて、びっくりしました。もちろん、どちらの栗きんとんも美味しいのですが、たぶんいろんなお店によって微妙に味わいが違っていて、土地の人それぞれのお気に入りがあるのだろうなと想像しました。川上屋さんにも、栗きんとんを干し柿で包んだお菓子や、栗かのこ最中など、栗を使ったお菓子がいっぱいありました。
◎川上屋 駅前店◎
中津川市太田町2-3-5 青松ビル 0573-66-1372
営業時間 8時~20時
年中無休
栗きんとん 1個237円(税込)
三軒目は『松月堂』さん。さっそく、栗きんとんをいただきましたが、あ、これも味わいが違う。口に含むと栗の風味が広がって、とてもふんわりした食感。こちらのお店も栗を使ったさまざまなお菓子がずらりと並んでいて、しぶかわ栗カステラとか、和風モンブランの栗花落(つゆり)、栗きんとんぷりんなど、また今までのお店とは違うバリエーション。もう目移りして困るのでした。
◎御栗菓子 松月堂◎
中津川市太田町2-5-29 0120-08-3008
営業時間 8時30分~18時30分
元旦のみ休業
栗きんとん 1個237円(税込)
さて、今度は駅のロータリーのすぐ横にある『信玄堂』さんの駅前店にお邪魔しました。いただいた栗きんとんは、ほくほく、ほっこり。栗のつぶつぶがしっかり感じられる食感でした。まだ4軒目なのに、見事に味も食感も違うなんて、中津川ではそれぞれのお店がしっかりと企業努力しているのですね。こちらでは、栗粉餅というほろほろの栗をお餅にまぶしたお菓子もありました。栗きんとんパイというのも美味しそう。栗を使ったお菓子にこんなに種類があるなんて。
◎栗菓子処 信玄堂◎
中津川市太田町2-1-7 0573-65-2635
営業時間 8時~18時30分
定休日 元旦
栗きんとん 1個237円(税込)
最後はタクシーに乗って、少し郊外にあるお店に向かいました。伺ったのは『満天星 一休』の苗木店。近くには石垣がマニアに人気だという苗木城跡があります。古民家を模した堂々たる造りの店内ではランチの栗おこわ膳や栗ぜんざい、お抹茶などもいただけるとあって、とても人気があるそうでで、バスや車でやって来た観光客で賑わっていました。ちょうど時分時だったので、二階のお座敷で栗おこわ膳をいただきました。ほくほくの栗ともっちりしたおこわが絶妙な相性で、ぺろりと完食。食後には、もちろん栗きんとんをいただきました。こちらは、なんと神話や伝説が数多く残る宮崎県高千穂峡で穫れる栗を取り寄せ、使っているというこだわりよう。栗の品質と鮮度を大事にしているという自信作には、やさしい甘みが感じられました。
◎満天星 一休◎
中津川市苗木岡田2531-1 0120-195504
営業時間 8時30分~19時30分
定休日 元旦
栗きんとん 1個230円(税込)
駅に帰る途中、旧中山道の中津川宿の町並みを歩いてみました。かつては本陣に、脇本陣、旅籠も29軒ほどあったという大きな宿場町。立派な卯建の上がった建物が並ぶ一角は、往事の賑わいを彷彿とさせるものでした。二軒目に訪れた川上屋さんの立派な本店もありました。
小さなエリアに栗のお菓子を作るお店が十何店舗も密集している中津川。山の恵みを生かしたお菓子を、お店ごとにそれぞれ工夫を凝らし、職人たちが腕を競い合い、ずーっと変わらず作り続けている。栗きんとんだけでなく、栗の美味しさを生かしたさまざまなお菓子が店ごとに個性を競うようにある。それを知ることができただけでも、来た甲斐がありました。本日いただいた栗きんとん、5店舗分。栗づくしの美味しい一日でした。今度は、今まで知らなかったお店の栗きんとんも試してみようと思います。
あー、満足、満足。
写真/ 中村泰
◎今日のコーディネイト◎
リボンヤーンで編んだニットは、ジル・サンダー。こっくりとやさしいクリーム色と適度なざっくり感が気に入っています。パンツはウエストから大きなタックを寄せた麻素材のセリーヌ。私が秘かに“ボンタン”と呼ぶシルエットには、白のナイキのスニーカーを合わせます。愛用しているかごバッグは、こんなカラーリング&コーディネイトにもぴったりです。
◎中津川市観光センター・にぎわい特産館◎
駅前の『にぎわい特産館』では、ここでしか買えない栗きんとんの詰め合わせ「中津川栗きんとんめぐり 風流/ささゆり」を販売しています。今年は12月14日までの限定販売です。また、15店舗の栗きんとんが1個から購入できるバラ売りコーナーも人気。
中津川市栄町1-1 にぎわいプラザ1F
営業時間 8時30分~18時
休館日 12月29日~1月3日・2月第3日曜日