COVER STORY

ギャルリ百草へ。

安藤雅信さんと明子さんがプロデュースする空間にお邪魔しました。


 

岐阜県多治見市に古民家を移築した

素敵なギャラリーがあるということは

ずいぶん前から耳にはしていました。

陶作家の安藤雅信さんが奥様の明子さんと

ジャンルにとらわれることなく

モノと暮らしを自在に結ぶ提案をなさっているとも聞きました。

大好きなガラス作家の辻さんとも交流があるようで

きっと私の好きなものがいっぱいあるのだろうな、と

期待に胸ふくらませながら伺いました。

そして、出会ったのは「生活工芸」という言葉とその意味でした。

 

 

多治見駅からタクシーに乗って少し小高い丘を登ると、小さく「ギャルリ百草」と道案内の看板が出ています。さらに雑木林の中の小径を石畳に沿って歩いていくと数寄屋風の古民家が現れます。ここは、築百年を超える古民家を東海道鳴海の宿から移築した空間。現代の生活に合うよう改築はしながらも、民家の構成を活かしたつくりになっています。玄関を入ると昔ながらの土間になっていて、靴を脱いで上がります。昔の日本の田舎のお宅にお邪魔したような感覚。ここには人が暮らしていた頃の佇まいがきちんと残っているのです。

 

 

上がったところの奥の六畳で、イタリアの手織り多様布のMappaを展示していましたが、これはリネンや太い大麻の糸で織られ、日本でいう風呂敷のようなものなのだそうです。お国柄が変われば、布の表情や色合いも変わるんですね、イタリアらしい色や柄に惹かれました。さらに奥に進むと、書院の間と次の間。約二十畳に縁側のついた広々とした空間。ここでは、年6回ほどさまざまな企画展を開催するのだそうです。

 

 

トントンと階段を上がると、二階は安藤さんのうつわを展示しているギャラリーになっていて、その奥は明子さんが提案しているサロン(筒状のスカートで、季節を通して素材や色の重ねなどを楽しむことも)などのウェアの空間。あたたかみのある白磁や粉引、どう見てもピューター皿(ヨーロッパで作られていた金属製のうつわ)にしか見えない銀彩のお皿。オランダで生まれた焼物デルフト皿の味わいにインスパイアされたオランダ皿。安藤さんのうつわといえば真っ先に挙げられる多彩な定番シリーズに加え、近頃熱中しているという中国茶の茶器シリーズが充実していました。

 

 

お茶は大好きで、お家でゆっくり過ごす時はいつも楽しんでいるので、銀彩の急須を買うことにしました。本当に銀でできているように見える安藤さんの銀彩。使い勝手もとても良さそうです。それにしても中国茶のために作られたさまざまな形の道具は、すべて安藤さんの焼物というのにも驚きます。茶壺や茶海だけでなく、茶葉を移し替えるのに使う茶則(普通は竹などの素材が多い)まで焼物なんですから!茶事教室「胡乱座」を通して新しい茶の湯と中国茶を提案されているので、ギャラリーには中国茶を楽しむ空間が加わったそうです。また、中国で注目を集める茶人・李曙韻氏の本『中国茶のこころ 茶味的麁相』の監修も担当され、中国茶シリーズは安藤さんの新たな定番として定着しそうです。

 

 

玄関を入って反対側にあるカフェでお茶をいただきました。こちらで使っている食器類はすべてギャラリーで扱っているもので、気に入れば買うこともできます。置いてあるテーブルや椅子は、身近な古道具などをうまく再利用して作ったそう。

ここギャルリ百草ができたのは、一九九八年。今年でちょうど二十年が経ちます。今でこそ古民家を改築したギャラリーやカフェはいたるところに増えてきましたが、安藤さんが始められた頃はほとんどなかったのではないでしょうか。普通の家にお邪魔するように入り口で靴を脱いで、生活空間である畳の部屋に置かれているうつわや洋服を見る。それだけでもモノの見方が変わるはずと安藤さんはおっしゃいます。ギャルリ百草にあるのは、社会や日常の中にあるアートも含めた生活道具。気に入ったものを手にとって、普段の生活の中で愛着を持って使う。日々使いこむことで、そのモノが生活にどんどん寄り添っていく。そんな生活と道具の関係を育む。それこそが、安藤さんが長い時間をかけて提案してきた「生活工芸」を楽しむ真髄なのかもしれません。

 

◎写真/中村泰

◎今日のコーディネイト◎

いろんな色が混じった糸で編まれたマルニのニットワンピース。裾は編みっぱなしになっていて、ぶら下がった糸がフリンジのように見えるのが可愛いでしょ。セリーヌのパンプスにソックスを合わせました。ストールはカシミア混。薄手だけれど、幅と長さがたっぷりあるので、こうしてぐるぐる巻きにすると素敵なボリュームが出るんです。

 

 

◎ギャルリ百草◎

百草とは松の異称。移築前の築百年余りの民家は、絞り染めで有名な東海道鳴海宿から二キロ足らずのところに建っていた。近くに有松もあり、松の材が豊富であったのか、床柱や床板何度、この家の主要な箇所に松材が多用されている。松は常盤草とも呼ばれ「永久不変」という意味がある。木目も味わいがあり、茶人が好む木である。めまぐるしく移り変わっていく消費社会から離れて、「モノ」と人のかかわりを、新しい世紀に向けて考え直したい、という動機によって一九九八年開廊。

(「美と暮らし」ギャラリー案内より)

 

ギャルリ百草

岐阜県多治見市東栄町2-8-16

0572-21-3368

http://www.momogusa.jp

 

休廊日は展示時期によって異なり、

展示替えによる休廊や季節休廊もあるため

事前にご確認ください。