COVER STORY

佃眞吾さんと。

『美しいものをつくる人たちを訪ねて』工芸編(後編)


 

作品を手に話が弾んでいるときに、

佃さんがいたずらっ子のような顔をして小さな缶の

中身を見せてくれました。

中には小さなノミや鉋がずらり。

これは、木工藝作家佃眞吾さんの

美を生み出すプレシャスかつスペシャルな道具。

小さきものへの真摯なこだわりと

道具ひとつとっても決して妥協しない

プロの作家としての顔も見せていただきました。

ますます、ファンになる私。

さて、対談後半です。

 

 

黒田

素材はどうやって調達しているんですか?

 

地方の銘木屋さんに買い付けに行ったり、

何軒かなじみの材木屋さんがあるので、

そちらにお願いしています。

僕たちは、やはり素材が大事ですから。

 

黒田

どんな道具を使うのですか?

(佃さん、小さな缶を開け、小さな道具たちを取り出す)

 

 

黒田

わあ、可愛い~

 

「くりもの」をするときには、

こんな小さな道具を使うんですよ。

 

黒田

ほんとに、可愛い。これ!

 

これがないと困るんですよ。

売っているものを少しずつ改造したり、

局面を削るときにはこういうので、

(削る真似をする)こういうふうに削っていくんですよ。

 

 

黒田

角度によってカーブが変わるんですね。

 

だから、こんなにたくさん、

全部いるわけなんですよ。

 

黒田

いちばん大事なものですね。

 

そう、珍しいかたちを出そうと思うと、

この道具をまず開発するんです。

 

黒田

佃さんのかたちのための道具なんですね。

それにしても可愛い。

 

 

職人さんや作家の人は

みんな自分の道具を持っていますよ。

たぶん、人によって微妙な

使い勝手というものがあるんだと思います。

東京の台東区には、

けっこうこういうマニアックな道具を

売っているお店がまだありますよ。

昔はよく行きました。偏屈な主人のいる店(笑)。

 

黒田

これは帯留めですね。素敵!

素材は何ですか?

 

 

螺鈿(らでん)ですね。

アワビの貝殻で作っているんです。

こういう小さなものも、作っています。

 

黒田

アワビの貝殻?

 

貝殻を平らにしたものを切って、

貼り合わせていくんです。

1ミリくらいのものを漆で木に貼り付け、

それから磨いていきます。

 

黒田

本当に作品の幅が広いですね。

こんな精巧な手作業までされるとは。

もともと、手先は器用だったんですか?

 

子供の頃から粘土で何か作る遊びは

しょっちゅうやっていましたねえ。

怪獣作ったり。やはり何かかたちを作るのが

好きだったんでしょうねえ。

だから、ものすごいプロにはなりたかった。

やるのだったら、一流のプロになりたい。

そう思いながら、修業してきました。

 

黒田

で、今は木工の世界で

一流のプロになっちゃったんですね。

 

生活の中に、お盆や折敷がひとつあるだけで、

印象ががらりと変わる。

そんな日本の木工がしたいなと思いました。

 

 

 

黒田

お盆や折敷って、もともと私たちのなかに

それを使う文化があったのに、

急速に西洋よりになってしまって・・・

もっともっと、使っていかなきゃ

もったいないですよね。

 

もともと、日本人は木とともに生きて、暮らしてきたから

生活そのものを豊かにしたいと思えば

木の道具にもきっと目は向いていくと思います。

そう、願っています。

もちろん、使う気にさせる道具をつくるのも、大事ですね。

 

黒田

そうですね。

いかに、気づいてもらえるかを

道具サイドから発信するというのが凄い!

これからも、いろんな作品楽しみにしています。

 

◎写真/中村泰

 

◎今日のコーディネイト◎

お座敷に座ってお話を伺うと聞いていたので、今日はワンピースにしました。柄物、私にしては珍しいでしょ。これは今シーズンのマルニです。鮮やかなグリーンに惹かれて購入しました。合わせるシューズは、10月にも登場したマルニのキルトタッセル。ワンピースにこんなフラットシューズ&ソックスを合わせる着こなし、大好きです。

 

 

◎佃眞吾さん◎

1967年、滋賀県長浜生まれ。家具屋や木工所で15年間、職人として働いたのち2004年に京都で独立。栗材の我谷盆をはじめ、伝統に根ざしながらも、今の感覚を取り入れた木工藝で人気を博している。

 

カバーストーリー番外編へ