COVER STORY

岡晋吾さんと。

『美しいものをつくる人たちを訪ねて』工芸編(後編)


 

ホーホケキョ。

 

窓の外で、ウグイスが鳴きました。

最初、あまりにも綺麗な声だったので、

もしやこれはテープ?なんて思ってしまった私・・・(笑)。

ここにはキツツキもやってきて、木をコンコンと叩くそうです。

ギャラリーのテラスに立つと、目に鮮やかな新緑が飛び込んできます。

 

空気が美味しくて、のどかで、

ゆっくり時間が流れる感じ。

 

天平窯には、創作のための

うらやましいくらいの環境が揃っています。

 

 

 

黒田

こういう場所に来ると、幸せの価値観が東京とはずいぶん違うなと思います。東京にいるとあの都市の勢いにのまれてしまうし、私の仕事は東京でしかできないんですけど、こういう土地にはやっぱり憧れます。

僕もこの場所が好きです。仕事していて、ふと目を離したときにこういう風景があってほしいなと思って、少しずつ形にしてきました。雑木林も、実は順番に花が咲くように、それなりに考えて植えているんです。最近は、ミツバチも飼い始めました。この辺、みかん農家が多いので、夏は柑橘系の蜂蜜がとれます。

 

黒田

いいな、自家製蜂蜜うらやましい。最高の環境ですよね。こういう場所なら創作意欲が途切れることがなさそうですね。この白瓷(はくじ)もとても素敵。

白瓷はね。一度絵を描きたくないなという時期があって、それなら白瓷をやってみようと思ったんです。ずいぶん昔のことですが。で、李朝白瓷をお手本にいろいろチャレンジして。

黒田

独特の肌合いですね。岡さんの李朝だから、岡李朝って呼べばいいのかしら。

李朝の色を再現するのは難しかったですね。材料が違いますから。昔のはガラス質が少ないんですよ。白い石を溶かして粉にしてオブラートのように付着させるというのが李朝のやり方。チャレンジした頃は文献もなくて、たぶんこうやって作ったんだろうなという想像で、白い石を粉にして粉引みたいにしてできたのが、岡李朝なんですよ。

 

 

黒田

なるほど。完成するまでは、きっといろんなご苦労があったのでしょうね。大きな壺もいいですね。

白瓷ばかり作っていたら、雑誌に白瓷作家・岡晋吾って書かれて。

黒田

白瓷も作る岡晋吾ですよね。

で、白瓷の後、染付ばかり作っている時期には、今度は染付作家・岡晋吾と書かれました(笑)。

黒田

肩書きのようなものをつけた方がわかりやすいんですよね。だけど染付の絵も、こなれていて素敵です。

 

 

安南染付とか、やっぱり好きなんですよね。民衆のスピリッツみたいなものが入っているのはいいですね。中国の官窯とかの完成されたものじゃなく、朝鮮のものとかね。

黒田

これから特に作っていきたいものはあるんですか。

今は、唐津焼にチャレンジしています。最近、描きたいと言うより、気持ちが土ものに行ってるんですよ。ま、それは白瓷や染付などいろんな方法がある自分の中でバランスを取っているのだと思いますが。

黒田

それも楽しみですね。向こうに作っているのは新しいギャラリーですか?

 

 

あれは、「ハナレ」。本当に好きなものだけを置いて、ここで作業したいと思って。冷蔵庫には、酒が入っています(笑)。好きなうつわに囲まれて、飲むこともできる。二階は資料室で本とかを置きます。

黒田

わあ、理想の空間ですね。ここから、また新しい岡作品が生まれていくわけですね。だいたいどれくらいの頻度で窯に火を入れるのですか?

普段は月に一回半くらいかなあ。個展があるときは月に2~3回ですね。今、窯は全部で4つあるんですが、僕と家内の個展が重なったときなんてもうフル回転ですよ。(※実は岡さんの奥様も陶芸家なんです。岡さつきさん。岡さんの影響を受けながらも、どこかほんのり優しい染付が多くて、もちろんファンになりました)

 

黒田

こちらの窯はかなり大きいですね。

これで白瓷を焼くんです。白瓷は灰をかぶりすぎると汚くなるので、ほどよく灰がかぶれるこの窯がちょうどいいんです。これは昭和30年ぐらいに唐津と瓷器を一緒に焼いた窯なんですよ。こういう風に設計してほしいとお願いしたら、たまたま両方焼ける窯と同じつくりだった。

 

 

黒田

それにしても岡さん、周りに無造作に壺が置かれすぎなんですけど。

もう、作品を置く場所がなくって・・・。

黒田

夜、トラックでこっそり来ようかしら(笑)。

 

 

とにかく多彩で多才。何でこんなにバリエーションがあるんだろう。

お話を伺って、その疑問がやっと解けました。

 

あるときは白瓷作家、またあるときは染付作家と称され、

そして今度は唐津作家と呼ばれるのでしょうか。

 

常に自分に宿題を与え、その問いに毎回高いレベルの回答を出していく。

そうすることで、また新しいものを創り出す。

方法はたくさんある。これが駄目なら、あれもある。

寄り道することも厭わない。

これ、とこだわらずに、そのときできるものを受け止め成長させていく。

 

さまざまな経験によって培われた方法の幅が、

陶芸家としての岡さんの懐の深さを創っているのだなと感じました。

 

 

◎今日のコーディネイト◎

ブラウスは、少し前のシークレットクローゼットのもの。合わせたワイドパンツは、エンフォルド。ゆるっとした感じがお気に入りです。トップスのボリュームを、しっかり受け止めてくれるバランスがいいでしょう。サンダルは、マルニ。いかにも私の好きそうなお花がついてます。

 

 

◎写真/中村泰

◎岡晋吾 陶芸家◎

1958年 長崎県佐世保市生まれ

1981年 佐賀県立窯業試験場デザイン科 絵付け科研修

1982~1992年 肥前諸窯に勤務

1993年 西有田にて独立

2003年 唐津市浜玉町に移転 天平窯 築窯

 

◎天平窯◎

〒849-5123

佐賀県唐津市浜玉町大字東山田1328-1

TEL & FAX 0955-56-2061

※詳しくはホームページをご覧ください。

https://www.tenpyougama.com/

 

◎白瓷(はくじ)とは◎

日本では白磁と表記するのが一般的ですが、岡さんによると石が100パーセント原料の場合は磁器と表記しますが、土などが入ると瓷器と表記するのだそうです。岡さんはとろりと柔らかな肌合いのために、原料にまるで調味料のように土や小石を加え独特の配合で焼いています。そういうときは(瓷)という字を使うのだそうです。

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